ゆえの日常生活と創作小話。
『 天使のキオク  』連載再開
2015年12月20日 (日) | 編集 |

『 天使のキオク(君と僕はそこにいた・後日談) 』

というわけで、水族館の話の翌日です。

題名変えました(笑)




「38度5分……昨日の疲れが出たのね。」

彼女はそう告げると、冷却シートを取り出し、額に貼った。

ほんの少しだけ顔を赤くさせ、一夜が泣きそうな顔で、母親を見た。

「病院に帰らないと、駄目?」

熱が出ているせいなのか、不安げに瞳が揺れている。

病院という言葉に、彼女は悲し気な色を見せたが

直ぐに其れを消し去り、母は一夜を安心させるように、髪を梳くと

「大丈夫よ、発作が出た訳じゃないから。昨日は一夜にとっても、冒険だったでしょう……?」


唯、躰が驚いただけよ。安心なさい。


でも明日も熱が続くようなら、天賀井先生の処に電話をしましょう。


それでいい?



(天賀井先生)



……幼い時から、ずっと見てくれている、医師の名前を出されてしまったら、一夜は頷くしかない。


そっと瞳を閉じる…………。


彼の意識は直ぐに、深い奥底へと引き摺り込まれて仕舞うのだった………………。






ぽつんと、空いている席に、如何しても目が行ってしまう。

其処は、一夜の座る席だ。

何時もであれば、彼は席に座って本を読んでおり

その隣の席にはカイルがいて、雑誌を読みながら、彼に話しかけ

二人のいる空間に、飛翔達が加わるというのが、普段の日常風景なのだが

けれど、一夜は……彼は、学校を休んでいた。

飛翔はシャープペンを、くるくる回し乍ら、昨日の帰り際の彼を思い出す。

笑顔で「また明日……」と別れたのに、なのに彼はいない。

朝のHRで、担任は「体調不良」で休みだと、云っていたけれど

実際は、如何なのだろう?

彼が休む原因だあるとすれば、アレだ。

昨日の水族館で、あの豪快なイルカ達による、水の洗礼しか考えられない。

飛翔は制服のポケットから携帯を取り出すと、ポチポチとメールを作成し始めた。

そうして打ち終わり、送信ボタンを押した処で、授業開始のチャイムが鳴り始めたのだった。




ひんやりとした感覚に、深い眠りの底から引き戻される。

重い瞼を開き、何の冷たさかと思い

視線を彷徨わせれば、額に触れていたのは、母の手だった。

彼女は一夜が起きた事に気付くと、申し訳なさそうな顔色を見せ

「ごめんね、起こしてしまったわね。冷却シートを張り替えてたの。」


大分温くなっていたから、気分はどう?


気持ち悪くない?


「ん、未だだるいけど大丈夫……母さん、今何時?」

「お昼前よ、ご飯食べれそう?」

「……欲しくないかも。」

「でも、何かお腹に入れておいた方がいいわ。果物なら平気?」

母の問いに、一夜は頷き、其れから視線を机の上に投げ掛けた。

「母さん、携帯取って貰っていい?」

「良いわよ。でも、余り無理しては駄目よ。」

母は軽く笑うと、忍武と色違いの携帯を手に取り、彼に渡した。

一夜は「ありがとう。」と云うと、携帯を開いた。

彼女は「階下に行くわね。」と告げて、部屋から出ていった。

表のディスプレイが明滅を繰り返している。

何かが届いてるとは思っていたけれど、履歴を確認すれば…………

着信履歴   12件

メール     30件


其の履歴の多さに、一夜はほんの少し瞳を瞬いて、一つ一つ確認していく。

着信は、兄・忍武や藤丸といった面々から始まり、メールも略、同じ名前で埋め尽くされていた。

其の内容は、己を心配するモノが殆どだったが

電光やカイルのメールは、今授業で何をやっているか

教科書の例題問題が判らない等と云った、些細なメールに切り替わっていた。

彼等のメールを読みながら、一夜は軽く吹き出し「ちゃんと授業受けなよ。」と、一人ぼやいた。

届いたメールの中から、兄・忍武と藤丸、委員長の桐ケ谷

そして飛翔の4人に対して、先にメールの返信を打っておく。

残りは返信不要と、後からでも差し支えないメール(電光とカイル)と分けておき

文字を打ち終わると、其れを送信する。終われば、携帯を閉じて、枕元に置いた。

やはり熱が出ているせいか、何時もだったらメールを打った位で、疲れを感じないのに…………。

直ぐに、うとうとと、微睡み始めてしまう。


「……駄目だなあ。」



落とされた言葉と共に、彼の意識は深く沈んで行く……………………。





スポンサーサイト